――― 2016年、某月某日、某居酒屋にて ―――
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- それでは対談をはじめさせていただきます、よろしくお願いします。
- (CUE) 僕で大丈夫なのー?!
- (ノゾエ) こちらこそです。ありがとうございます!
- 僕との対談でお客さん喜ぶかなー?
- それ以前に僕が喜んでいるので(笑)!
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- ではまず、CUEさんは普段どのような活動をされているんですか?
- 普段は資生堂でアートディレクターをしているので、会社に行っています。週五日は。
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- 資生堂のアートディレクターって具体的にどういう仕事をされてるんですか?
- 資生堂だとお化粧品のイメージを作る仕事をしているのでってなんか普通(のインタビュー)っぽくなってきちゃった(笑)
まあざっくりいっちゃうと、僕は商品のCM作ったり、ポスター作ったりっていう仕事かな。
元々小さい時から舞台が好きだったから、人を介しての仕事がしたいなと思ってて、なんていうんだろ、人間を入れたうえでのクリエイションをビジュアル化したいと思ったから資生堂に入ったのかなー。 - ―
- そんなCUEさんとノゾエさんは、どうやって出会われたんですか?
- はえぎわのチラシデザインをやってくれてた女の子の結婚式で、
- そうそうその子が僕の大学の後輩で。
- たまたまご紹介いただいて。
- 「CUEさん演劇、好きですよね?」って言われて、うん、なに?って聞いたら「あの方、演出家さんですよ」って言われて「え!」って。 「岸田(國士)戯曲賞も取られてます」「え!マジで?!」って。
- (笑)
- 普通ね、岸田戯曲賞なんて一般の人知らないから、「え!♪」って目キラキラしちゃって、どの人どの人!お話したい!って。
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- その時のお互いの印象はどんな感じだったんですか?
- 僕はもう(CUEさんの)見た目のインパクト。CUEさん、髪の毛がココ(写真を参照ください)にあるから、遠目で見たときに、よく時代劇でおでこに小さい帽子みたいのしてる人いるじゃないですか。
- 天狗みたいな?
- そうそう天狗みたいな。それで、近くで見たら、髪の毛かい!って。
- 一同
- (笑)
- そしたら、その方から演劇すきなんですーって言われたからすごい嬉しかった。
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- CUEさんは、ノゾエさんのことどんな印象でした?
- 僕はこんな感じだけど、ノゾエさんもこんな感じだから全然会話が弾まなくて。
- 一同
- (笑)
- そしたら、はえぎわの「ガラパコスパコス(再演。2013年、@三鷹市芸術文化センター・星のホール)」を観にきてくださって。
- そう。ノゾエさんが何者かもよく知らずに、全然期待しないで観に行って、衝撃受けて、「あ、この人追っかけよ」って(笑)
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- はえぎわの作品を初めて観たときの印象ってどんな感じでした?
- もう衝撃!久しぶりにヤバいもん観た!って感じ。来たー!って。昔は体育座りして観るようなお芝居を観てたけど、はっきりいっちゃうと、ここ最近(演劇が)つまんないってなっちゃってたんだけど、はえぎわを観て、昔(の演劇に熱中してた時)に戻ってきたって。
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- そこからはえぎわの作品に参加するようになったのはどういう経緯だったんですか?
- 「ガラパコスパコス」観た後、「サニーサイドアップ」(本多劇場)とかノゾエさんの作品何本か観てて、丁度その時期に、自分とキムさんていうアーティストの展覧会があって、その中で、各界の著名人のお友達とかで今面白いと思ってる人とその会場でトークするっていう。BONNIE PINKとか、辛酸なめ子さんとか、明和電機さんとか、色んな人を日替わりで10人呼んで。それで来てもらったの。
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- BONNIE PINKとノゾエさんが並びで(笑)
- そのトークの時に、CUEさんが「舞台で何かやれることあるならやりたい」っておっしゃってくれて。だから僕もその場で、「じゃあ、次回公演のチラシのデザインとかどうですか?」って聞いたら「やるやるー!」って(笑) そこから。
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- 今回宣伝美術以外にも衣装、舞台美術と美術全般を担当されるとのことですが。
- CUEさんはいつも、なんでもやりたい!っておっしゃってくださってて、僕もいつか!と思っていて、それで今回は、会場がちょっと特殊ということもあって、あ、今だなって。
- お話もらってから日にち経ってるからあれだけど、最初にお話聞いた時は焦ってたよかなり。1週間くらいずーっと。
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- なんで焦ったんですか?
- ・・・どうすんだろうって(笑)
- (笑)
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- これどうすんだろうって(笑)
- 舞台美術は初めてだから。どうすんだろうって。トンカンとかはできないよ?考えることはできるけど。でも、はえぎわ好きだから、土足で上がるのはやだし、でも好きな人たちとは好きな感覚を共有できるって思ってたから、ノゾエさんに僕のこと好きに使ってくださいって言って。資生堂じゃないこととか。
- 僕はなんか、自分の思い描いたものを全部注文するというより、「対話」するのが好きで。例えば、自分のビジョンにも必ず余白を残しておいて、相手に投げてみる。すると何か返ってくる。つまり、その人の感性を融合したら、どんな+αになるかっていう。 それがいつも楽しみで。そんな中でCUEさんはまず、いわゆる舞台人じゃない、しかも資生堂という第一線でやってらっしゃる方だし、個人でも創作活動をされている、本域のアーティストさん。 どういうものがうまれてくるんだろうという楽しみがすごいある。
- 仕事上、お題に合わせてクリエーションするっていうのが大好きだから、自分風と言うよりは相手の求めるベストを出すのが好き、そうすると違う自分が出てきて面白いかもって。
- あーわかります。
- そうそう、だからそういうところが(ノゾエさんと)似てるから、どっちが球を投げるか、みたいな(笑) アートディレクターってちょっと役者さんぽいなって思ってて、意外とそういうところが似てるかなって思う。
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- 新作について
- 元気よくやりたい(笑)。観劇が趣味じゃない人にもちゃんと楽しんでもらえるようにしたいし、かと言って新しさも追及したい。でも「新しいワクワクばかりに気を取られてたら、大事なものを見失うぞ」。というのが、テーマの一つというか。
僕は、巧みな物語よりも、面白い人物が出てくる舞台が好き。必死に頑張るダメな大人たちで溢れる作品にしたい。そこに今回は、純度の高い恋愛も絡ませたい。
あと、ニッポン放送さんの、くだらない感じが好きだから、そこの劇場でやるのに、あんまり気難しく構えてもな、とは思ってます。 だから多分今回面白いと思う。 - ―
- (笑)
- 直感ですけど、この直感、意外と外れないんで(笑)
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- おーこれは楽しみですね(笑)
- CUEさんいるし。
- えー!なんでー!(笑)
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- 次回公演の意気込みをお聞かせください
- 僕は今世紀最上、最高にそのことしか考えられない。他の仕事もいっぱいあるんだけど今は公演のことで頭がいっぱい、もう作りたい。 もうノゾエさんの脚本無視して作っちゃう。
- 一同
- (笑)
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- CUEさん合わせみたいな(笑)
- 若干待ってください(笑)
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- もう想いが溢れちゃってるわけですね。
- 待ってられない(笑)
- 一同
- (笑)
- 勝手に作り始めて、違ったらまた作る!
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- 先に衣装が決まる舞台ってだいぶ新しいですね(笑)
- 僕は、CUEさんとのやり取りもそうだし、初めての空間ってのもそうだし、宮崎吐夢さんと、清水優くんというお二人も初めて参加してもらうので、そこから触発されるものって絶対あるし、あとは、最近、外部への出演が多い劇団員がどういったものを持ち帰ってくるのか?といったところも含めて、つまりワクワクでいっぱいです(笑)。
インタビュアー:山口航太 / 撮影、編集:富川一人
CUE(成田久) プロフィール
資生堂の宣伝 デザイン部に所属。アートディレクター アーティスト。資生堂のさまざまなブランド プロジェクトのアートディレクションに携わる。2013年キュキュキュカンパニー設立。 NHK大河ドラマ「八重の桜」等多数のディレクションを手掛ける。雑誌「装苑」にて演劇レビュー連載中。 |