岡山

新幹線に乗ること三時間強。せいじが降りたったのは、34年前に自身が生まれた地、岡山であった。
母親の生家がある土地でもある。せいじの両隣にはその母親と父親がいた。駅から外に出るなり、母親は日傘を取りだし、父親も日傘を取り出した。なぜ親父まで、と思うと同時に、父親の日傘の方がひとまわり大きかったのをせいじは見逃さなかった。
父親は、日傘を押し広げると同時にデジタルカメラのレンズも押し開き、駅前に君臨する桃太郎像を撮り始めた。せいじは、少し離れた木陰からその様子をぼんやりと眺めていた。
せいじは早く信号を渡りたかった。早く渡って、市内を縦断するチンチン電車に早く乗りたかった。それほどまでに、その日の岡山は暑かったのだった!

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